○小美玉市火災調査規程
令和7年2月1日
消防本部訓令第1号
小美玉市火災調査規程(平成18年小美玉市消防本部訓令第17号)の全部を改正する。
(趣旨)
第1条 この訓令は、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第7章の規定に基づいて実施する火災の調査(以下「調査」という。)について必要な事項を定めるものとする。
(用語の定義)
第2条 この訓令の用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
(1) 火災 人の意図に反して発生し、若しくは拡大し、又は放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの又は人の意図に反して発生し、若しくは拡大した爆発現象をいう。
(2) 爆発現象 化学的変化による爆発の一つの形態であり、急速に進行する化学反応によって多量のガスと熱を発生し、爆鳴、火炎及び破壊作用を伴う現象をいう。
(3) 調査 火災現場から消防行政施策の資料を収集するための質問、実況見分、鑑識、鑑定、実験等の一連の行動をいう。
(4) 鑑識 火災の原因の判定を補助するため、専門的な知識、技術、経験及び機器を活用し、総合的な見地から具体的な事実関係を明らかにすることをいう。
(5) 鑑定 火災にかかわる物件の形状、構造、材質、成分、性質及びこれらに関連する現象について、科学的手法により、必要な試験及び実験を行い、その結果を基に火災原因判定のための資料を得ることをいう。
(6) 調査員 調査に従事する消防職員をいう。
(7) 関係者等 法第2条第4項に定める関係者、火災の発見者、通報者、初期消火者その他調査の参考となる情報を提供しうる者をいう。
(8) 建物 土地に定着する工作物のうち屋根及び柱若しくは壁を有するもの、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設けた事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設をいう。
(9) 収容物 原則として柱、壁等の区画の中心線で囲まれた部分に収容されている物のほか、バルコニー、ベランダ等に置かれた物をいう。
(10) 森林 木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹並びにこれらの土地以外で木竹の集団的な生育に供される土地をいい、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く。
(11) 原野 雑草、灌木類が自然に生育している土地で人が利用しないものをいう。
(12) 牧野 主として家畜の放牧又は家畜の飼料若しくは敷料の採取の目的に供される土地(耕地の目的に供される土地を除く。)をいう。
(13) 車両 原動機を用いて陸上を移動することを目的として製造された用具であって自動車、汽車、電車及び原動機付自転車をいう。
(14) 被けん引車 車両によってけん引される目的で造られた車、車両によってけん引されているリヤカーその他の軽車両をいう。
(15) 船舶 独行機能を有する帆船、汽船及び端舟並びに独行機能を有しない住居船、倉庫船、はしけ等をいう。
(16) 航空機 人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船等の機器をいう。
(火災の種別)
第3条 火災の種別は、次の各号に区分するものとする。
(1) 建物火災 建物又はその収容物が焼損した火災をいう。
(2) 林野火災 森林、原野又は牧野が焼損した火災をいう。
(3) 車両火災 車両、被けん引車又はそれらの積載物が焼損した火災をいう。
(4) 船舶火災 船舶又はその積載物が焼損した火災をいう。
(5) 航空機火災 航空機又はその積載物が焼損した火災をいう。
(6) その他の火災 前各号に掲げる火災以外の火災をいう。
2 前項各号の火災の種別が2以上複合するときは、焼き損害額の大なるものの種別とする。ただし、その態様により焼き損害額の大なるものの種別によることが社会通念上適当でないと認められるときは、この限りでない。
(調査の区分及び範囲)
第4条 調査は、火災原因調査及び火災損害調査に区分し、その範囲は次に掲げるとおりとする。
(1) 火災原因調査
ア 出火原因 火災発生経過及び出火箇所
イ 発見、通報及び初期消火状況 発見の動機、通報及び初期消火の一連の行動経過
ウ 延焼状況 建物火災の延焼経路、延焼拡大要因等
エ 避難状況 避難経路、避難上の支障要因等
オ 消防用設備等又は特殊消防用設備等の状況 消防用設備等又は特殊消防用設備等の使用又は作動等の状況
カ 住宅防災対策の状況 住宅用防災機器の使用又は作動等の状況
(2) 火災損害調査
ア 人的被害の状況 火災による死傷者、り災世帯、り災人員等の人的な被害の状況及びその発生状況
イ 物的被害の状況 火災による焼き、消火、爆発等による物的な被害の状況
ウ 損害額の評価等 火災により受けた物的な損害の評価及び火災保険等の加入状況
(調査の責任)
第5条 消防長は、管内の火災のうち次の各号に掲げるものについて調査責任を有するものとする。
(1) 火災による死者が3人以上生じたもの
(2) 死者及び負傷者の合計が10人以上生じたもの
(3) 大規模な公共施設及びこれらに類するもの又は社会的影響が大きいもの
2 消防署長(以下「署長」という。)は、管轄区域内の火災のうち消防長が行う調査以外のものについて調査責任を有するものとする。
3 1件の火災のうち延焼範囲が2以上の管轄区域にまたがった火災については、発生区域の署長が調査を行うものとし、延焼範囲を管轄する署長は、これに協力するものとする。
(調査体制の確立)
第6条 消防長及び署長(以下「消防長等」という。)は、調査業務を効率的に行うために常に人員及び機材を整備し、調査体制の万全を図るとともに、調査員に対して指導育成し調査能力の向上に努めなければならない。
(調査本部の設置)
第7条 消防長等は、火災の形態により調査を機動的かつ効果的に実施するため、必要があると認めるときは、調査本部を設置するものとする。
(調査の実施)
第8条 消防長等は、火災の覚知とともに調査を開始しなければならない。
(調査員の指定)
第9条 消防長等は、法第31条、第32条第1項、第33条、第34条第1項及び第35条の2第1項に規定する調査、質問及び立入りを調査員に行わせることができるものとする。
2 消防長等は、調査員を指定して調査に従事させるものとする。
(調査員の責務)
第10条 調査員は、調査を行うために必要な知識及び技術を修得し、調査能力の向上に努めなければならない。
(調査員の遵守事項)
第11条 調査員は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 火災調査技術の向上を図るため、常に火災の現象及び関係法令の研究に努めること。
(2) 法に定める権限及び手続に従い、厳正かつ公正に行うこと。
(3) 個人の自由及び権利を尊重するとともに、調査上知り得た秘密を他に漏らさないこと。
(4) 調査を的確かつ円滑に行うため、調査員相互の連絡協調を図ること。
(5) 原因等の究明は、綿密かつ詳細に行うこと。
(6) 調査の執行上、関係者の民事的紛争に関与しないこと。
(7) 調査の経過その他調査上の必要事項を記録保存しておくこと。
(8) 警察機関その他関係機関と緊密な連携を保ち、相互に協力して調査を執行しなければならない。
(調査の原則)
第12条 調査は、物的証拠を主体とし、科学的方法による合理的な事実の解明でなければならない。
(立入りの原則)
第13条 調査員は、関係者の承諾を得て、現場その他関係のある場所に立ち入ることを原則とする。
2 調査のため関係のある場所に立ち入るときは、小美玉市消防職員立入検査証の様式に関する規則(平成18年小美玉市規則第131号)第2条に規定する立入検査証を携帯し、関係のある者の請求があるときは、これを示さなければならない。
(出火出場時の見分状況)
第14条 火災に出場した消防職員(以下「消防隊員」という。)は、消防活動等を通じて火災の状況の見分に努めなければならない。
2 消防隊員は、出場途上及び現場において関係者等への質問及び現場の状況から、発見、通報、初期消火、火気管理、避難、死傷者、消防対象物のり災状況、消防用設備等の使用、作動状況等を把握し、事後の調査に活用させるよう配慮しなければならない。
(現場の保存)
第15条 消防隊員は、消防活動をするに当たって、物件を移動し、又は破壊するときは最小限にとどめ、事後の調査の支障とならないよう、現場の保存に努めなければならない。
2 消防隊員は、消防活動のためやむを得ず出火場所付近の物件を移動し、又は破壊しようとするときは、原状が分かるよう必要な措置を講じなければならない。
(焼死者等の取扱い)
第16条 消防隊員は、火災現場において焼死者その他変死者があるとき又はあると認めたときは速やかに消防長に報告し、所轄警察署長に通報するとともに現場保存に努めなければならない。
(消防警戒区域の設定)
第17条 消防長等は、現場調査のため法第28条により消防警戒区域を設定し、現場保存に努めなければならない。
2 前項の規定による消防警戒区域の設定は、所轄警察署と連携を密にして行うものとする。
3 消防警戒区域内に関係者又は電気、ガス若しくは水道業の工事人その他を立ち入らせる場合は、消防職員を立ち会わせるものとする。
(調査の指揮)
第18条 消防長等は、調査の万全を期すため調査員の中から指揮する者(以下「調査責任者」という。)を指定しなければならない。
2 調査責任者の責務は、次に掲げるとおりとする。
(1) 現場の調査、調査書類の作成等調査全般の担当者の指定に関すること。
(2) 捜査機関その他の関係機関との調整に関すること。
(現場立会人)
第19条 現場の調査は、関係者を現場立会人として実施しなければならない。ただし、特別な事情により関係者が不在でやむを得ない場合は、警察官又は関係者の近親者等を立会人とすることができる。
2 現場立会人は、見分しようとする場所及び物件に直接関係する者を優先しなければならない。
3 火災現場において調査のため必要がある場合は、関係者の了解を得て当該火災に関係する物件の製造者等を立会人とすることができる。
4 現場の立会いを求めた場合は、立会人の安全管理、健康管理、言動等に細心の配慮をしなければならない。
(実況見分)
第20条 調査員は、原因決定資料の発見入手及び被害状況の把握に努め、全ての火災に対しその実況を詳細に見分しなければならない。
2 現場の発掘は、現場見分状況、出火出場時の見分状況及び関係者等の申述を加え総合的に判断し、出火範囲として限定した区域を周囲から出火箇所付近へ順次実施するものとする。
3 発掘に際しては、立会人の申述に基づく物品配置等に留意し、関係物件に細心の配慮をしなければならない。
4 発掘は、常に復元的観点に立って行わなければならない。
5 調査員は、実況見分を行ったときは、実況見分調査書(様式第1号)を作成するものとする。
6 実況見分調査書には、その内容を明らかにするため、図面及び写真を添付しなければならない。
(質問等)
第21条 調査員は、り災物件の出火前の状況、火気及び可燃物の使用管理の状況、火災の推移、居住者等の行動等について、関係者等から任意に申述を得るように努めなければならない。
2 質問を行うに当たっては、場所、時期等を考慮するとともに、自己が期待し、又は希望する申述内容を相手方に暗示する等の方法により誘導してはならない。
4 質問調査書を作成した調査員は、当該質問調査書を被質問者に読み聞かせ、又は閲覧させ、調書に誤りのないことを確認したときは、これに署名を求めるものとする。ただし、これを拒んだ場合は、この限りでない。
(少年等に対する質問等)
第22条 18歳未満の少年並びに身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第4条に定める身体障害者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第5条に定める精神障害者(以下「少年等」という。)の関係する火災で、前条に定める質問を行う場合には、立会人を置いて行うものとする。ただし、立会人を置くことで、真実の申述を得られないと判断されるときは、この限りでない。
2 前項の質問を行うに当たっては、少年等の心情を考慮し、十分な理解をもって当たらなくてはならない。
3 少年等は、現場見分の立会人としてはならない。ただし、年齢、心情その他諸般の事情により支障がないと認められる場合は、この限りでない。
(原因の決定)
第23条 火災の原因は、実況見分調査書、出火出場時における見分調査書、質問調査書及びその他関係資料を総合的に検討し、科学的かつ合理的に考察して決定しなければならない。
(官公署への照会)
第24条 消防長等は、官公署に対し調査に関する事項を照会する場合は、火災調査関係事項照会書(様式第4号)により行うものとする。
(資料等の提出)
第25条 消防長等は、火災の原因等の調査のため必要と思われる場合は、火災の原因である疑いがあると認められる製品を製造し、若しくは輸入した者(以下「製造業者等」という。)又は関係者等に対し、物件、資料等(以下「資料等」という。)の提出及び報告を任意に求めるものとする。
3 消防長等は、立証のため調査が終了したときは、努めて資料等を返還するものとする。
3 資料等を返還する場合には、調査資料保管書と引換えに行うものとする。
(鑑定)
第28条 消防長等は、調査上特に必要がある場合は、鑑定依頼書(様式第11号)により、公的機関に鑑定を依頼することができる。
(調査書類の作成及び管理)
第29条 消防長等は、管轄区域内で発生した火災について、次の各号に掲げる火災調査に必要な書類(以下「調査書類」という。)を作成し、管理しなければならない。
2 調査書類は、次のとおりとする。
(1) 火災調査報告書(様式第12号)
(3) 火災原因の判定等にかかわる調査書
ア 火災原因調査報告書(様式第15号)
イ 火災原因判定書(様式第3号)
ウ 防火管理等調査書(様式第16号)
エ 危険物施設等調査書(様式第17号)
(4) 出火出場時における見分調査書(様式第18号)
(5) 実況見分にかかわる調査書
ア 実況見分調査書(様式第1号)
イ 写真用紙(様式第19号)
(6) 質問調査書(様式第2号)
(7) 継続用紙(様式第20号)
(8) 火災原因の立証のために必要な資料
ア 鑑定書
イ 調査員による実験結果報告書
ウ 火災調査関係事項照会書に対する回答文書
エ その他調査書類作成上必要な文書等
(9) 損害調査にかかわる調査書
ア 火災損害調査報告書(様式第21号)
イ 火災損害調査書(様式第22号)
ウ 建物・収容物損害調査書(様式第23号)
エ 建物以外の損害調査書(様式第24号)
オ 死傷者調査書(様式第25号)
3 調査書類には、調査の内容を明らかにするため、必要な写真及び図面を作成し、添付するものとする。
4 調査書類は、火災の程度及び種別に応じて次の基準により作成するものとする。
(1) 建物のぼや火災、林野火災、車両火災、その他の火災で、損害額が計上されない火災
ア 火災調査書
イ 実況見分調査書
ウ 次に掲げる調査書等のうち必要な調査書
(ア) 防火管理等調査書
(イ) 質問調査書
(ウ) 損害調査にかかわる調査書
(2) 前号に掲げる以外の火災及び消防長等が必要と認める火災
ア 火災調査書
イ 火災原因判定書
ウ 実況見分調査書
エ 質問調査書
オ 次に掲げる調査書等のうち必要な調査書
(ア) 出火出場時における見分調査書
(イ) 防火管理等調査書
(ウ) 損害調査にかかわる調査書
(3) 消防長等は前2号の定めによるほか、火災の状況又は程度により調査書類の一部を追加又は省略することができる。
(速報)
第30条 署長は、火災調査速報(様式第26号)を作成し、案内図(地図の写し)を添付して、3日以内に消防長に報告しなければならない。
(報告)
第31条 署長又は予防課長は、火災調査終了後60日以内に次の書類を消防長に報告しなければならない。ただし、特異的な火災等で期限内に報告することができない場合は、あらかじめその理由を書面にて消防長に報告しなければならない。
(1) 火災調査報告書(様式第12号)
(3) 死傷者調査書(様式第25号)
(り災申告書)
第32条 火災の損害調査は、り災した消防対象物の関係者に対し、次に掲げるり災申告書により申告を求めるものとする。
(1) 不動産り災申告書(様式第27号)
(3) 車両・船舶・航空機り災申告書(様式第30号)
2 前項のり災の証明は、原則として火災現場の見分が終了したのち交付するものとする。
(り災証明の処理)
第34条 り災証明書を交付したときは、り災証明処理台帳(様式第34号)に記入し交付の状況を明確にしておかなければならない。
(照会及び証人等の対応)
第35条 消防長等は、裁判所又は捜査機関等から調査結果の内容について照会があった場合は、調査書類の抄本を送付し、又は内容について回答することができる。
2 前項の照会に対しては、個人の名誉及びプライバシーを尊重するとともにその他消防行政に及ぼす影響に細心の注意を払い、互いに協議の上対応するものとする。
3 職員は、自己の担当した調査に関して捜査機関から参考人として出頭を要請され、又は裁判所から証人等として呼び出し、若しくは召喚を受けた場合は、所属長に、所属長は消防長にその事案概要を報告しなければならない。
4 前項により捜査機関又は裁判所に出頭した結果についても同様とする。
(書類の保存等)
第36条 消防長等は、必要事項を火災調査記録簿(様式第35号)に記載するものとし、決裁後の調査書類は、Portable Document Format(以下「PDF」という。)形式でデータ保存するものとする。
2 調査書類は、書類原本を20年保存とし、PDF形式でのデータを永年保存とする。
(準用)
第37条 この訓令において別に定めのあるものを除くほかは、火災報告取扱要領を準用する。
(委任)
第38条 この訓令の施行に関し必要な事項は、消防長が別に定める。
附則
この訓令は、令和7年2月1日から施行する。