○小美玉市消防本部火災調査事務処理要綱
令和7年2月1日
消防本部訓令第2号
(趣旨)
第1条 この訓令は、小美玉市消防本部火災調査規程(令和6年小美玉市消防本部訓令第1号。以下「規程」という。)第38条の規定に基づき、火災調査(以下「調査」という。)の事務処理について必要な事項を定めるものとする。
(調査の指揮)
第2条 消防署長(以下「署長」という。)は、管轄区域内に発生した火災又は覚知した火災の調査に関する全ての責任を有し、その責務を果たすため調査体制の万全を期さなければならない。
2 調査責任者及び調査書を作成する調査員は、火災が発生した管轄区域内の消防士長以上の階級の者を基本とする。
(原因の決定)
第3条 出火原因を決定するに当たっては、発火源、経過及び着火物を考察し、その調査資料の多寡によって出火原因を次に掲げるとおり決定しなければならない。
(1) 判定 信頼性の高い各資料を統合することにより、疑う余地なくその原因が具体的かつ科学的に確定される場合又は具体的かつ科学的にその原因を断定し難いが、多少の推理を加えることによって、疑う余地を残さない場合に使用する。
(2) 推定 信頼性のある資料によっては直接判定できないが、推理すれば合理的にその原因を推測できる場合に使用する。
(放火の判定について)
第4条 前条の決定において、発火源、経過及び着火物の全てが「不明」となる場合は、原則として2点以上の出火原因を消去法等による考察で比較し考察結果を記述しなければならない。この場合において、他の出火原因が否定され放火以外に考えられないが、消極的な状況資料しか整わない場合には「放火の疑い」とし、何者かによって放火されなければ発生しなかったであろうと認められる場合には放火と断定し、又は判定する。
2 前項において「放火の疑い」とは、放火による火災と考えられるが、他の出火の可能性を残す火災に適用する。この場合において、判定記述は、「放火の疑いと判定する」とし、発火源については「不明」とする。
(消防本部予防課の調査出場体制)
第5条 消防本部予防課の調査については、規程第5条第1項に規定するものその他消防長が必要であると認めるものとする。
(出火出場時の見分状況把握)規程第14条関係
第6条 調査責任者は消防隊員に、次の事項について記載した出火出場時における見分調査書の提出を求めることができる。
(1) 出場途上における見分状況
ア 覚知時の位置状況
イ 出場途上時の火煙、異臭、爆発等の状況及びその確認位置
ウ 現場到着が遅れた場合の理由(交通渋滞や踏切の遮断状況等)
エ 部署位置
(2) 現場到着時における見分状況
ア 下車後の行動
イ 燃えの状況、延焼状況、屋根の燃え抜け、軒先開口部からの火煙の噴出状況、火勢の強弱及び確認の位置
ウ 異音、異臭、爆発等、特異な現象及び確認の位置
エ 関係者の負傷、服装、行動の概要及び応答内容
オ 建物の戸、窓、シャッター等の開閉及び施錠状況
(3) 火災防ぎょ中における見分状況
ア 延焼状況
イ 関係者等が発見した内容
ウ 残火処理に伴う出火箇所付近の物件移動、倒壊及び損壊の状況
エ 急激に延焼拡大した物件(ボンベ・タンク等)
オ 異常な延焼状況を示した箇所
(4) 死傷者の発見、救出等の状況
ア 死傷者の発見時の位置、延焼等の状況
イ 死傷者の救出、救護等の状況
(5) その他の特異事項
(実況見分)
第7条 実況見分は、見分を正当化、かつ、その結果に証拠能力を持たせるため関係者の立会いを不可欠とする。
2 調査責任者は、指定した調査員に、実況見分調査書の提出を求めることができる。
3 実況見分調査書は、見分中に発見される物件、特異な現象等について、その位置、状況等について図面及び写真等の資料を作成し、調書の内容を補完する。
4 実況見分調査書には、鎮火後における焼損状況や、復元した焼損状況をありのまま記録し、抽象的表現や主観的表現を避け、次の事項について、系統的に分かり易く記載するものとする。
(1) 現場の位置及び付近の状況
ア 道路案内の要領で、付近にある建物、その他の目標を明示して現場を記載すること。
イ 現場を中心とした周囲の地形、道路状況、建物の粗密、構造等概要、水利状況その他の状況を記載すること。
(2) 現場の模様
ア 火災現場全域にわたり、現場発掘前の見分状況を記載する。ただし、立会人の証言に基づくものは、それを明らかにすること。
イ り災建物の配置、構造、階層並びに占有、管理及び所有の状況
ウ り災建物の総括的な焼損、破壊、水損程度等の模様
(3) 焼損状況
ア 出火箇所の判定及び原因の判定に必要な焼損の状況その他の見分事実を記載すること。
(ア) 類焼建物については、焼けの方向性を主体とした焼損の状況
(イ) 出火箇所を中心として、燃え止まりの建物又は部屋から、順次出火箇所に向かって順序良く系統づけて記載すること。
(ウ) 周辺は概括的に、出火箇所に近づくにつれて詳細を記載すること。
イ 現場発掘する範囲内は、発掘の進展に応じて、見分した物件の焼損状況や、位置、質、形、状態、量等を必要に応じて詳細に記載すること。
(ア) 出火建物及び出火箇所周辺の構造、構造材、造作、家具、調度その他屋内外の物件や付帯建築物、工作物等の焼けの方向性を主体とした焼損状況や、位置、質、形、状態、量等の詳細な見分事実
(イ) 出火の可能性のある各発火源の位置、質、形、状態、構造、焼損状況等の見分事実及びそれらの機能
(ウ) 各発火源について予想される経過及び着火物との関連において必要とする詳細な見分事実
(エ) 出火箇所及び出火原因のほか、関連する事実についてり災していないものについても記載する。(漏電の場合の漏電経路、自動火災報知設備の受信機状況、住宅用火災報知設備の状況等)
(4) その他調査上必要な事項
5 調査員は、調査上必要な図面及び写真を作成しなければならない。この場合において、これらは、火災現場を表すもの、燃焼又は延焼等火災現場の状況を表すもの、現場見分における個々の状況を表すもの、り災状況を表すもの、死傷状況を表すもの等の目的別に、次に掲げるところにより作成するものとする。
(1) 図面は原則として、北が上になるように作成すること。
(2) 図面は原則として、実測し作成するものとすること。
(3) 図面は正確な縮尺で作成すること。
(4) 図面は、必要に応じて記号を使用する場合は、凡例を記載すること。
(5) 図面の表題は、抽象的表現や主観的表現を使用しないこと。
(6) 写真は目的に応じて必要な標示を付して、原則として人物及び陰影を排除した状態で撮影すること。
(7) 撮影する被写体は、実況見分の順序、延焼の経路、り災程度、損害状況、火災の規模、特殊火災等の種別、位置及び範囲が把握できること。
(8) 現場写真は原則として次に掲げるものとする。
ア 火災現場の全景(小型無人航空機などによる撮影写真を含む)
イ 各建物(室)の焼損状況
ウ 出火箇所付近の焼損状況
エ 復元された焼損状況
オ 発火源
カ 延焼経路を示す焼損状況
キ 死者の状況
ク その他見分資料として必要な焼損状況
(9) 被写体は、その位置を明示しうる目標物(柱、敷居、家具調度等)を含めて撮影すること。
(質問)
第8条 調査責任者は、指定した調査員に、人的な立証資料とするため質問調査書の作成を指示することができる。
2 前項により、質問調査書を作成する調査員は、次の者の申述による証言を求めるものとする。
(1) 火災の発生に直接関係のある者
(2) 火元の関係者
(3) 火災を発見した者
(4) 火災を通報した者
(5) 初期消火に従事した者
(6) その他関係のある者
3 調査員は、次の事項のうち、該当する申述内容を記載する。
(1) 出火前における出火建物(出火箇所)等の管理状況、作業状況、火気使用状況等
(2) 出火箇所で発掘された物件の保守管理、使用状況及び構造、機能等
(3) 出火時の状況(出火時の申述者及び関係者の位置、出火の状況等)
(4) 発見時の経緯及び場所、燃焼状況並びに発見後の行動
(5) 火災を知った動機、通報時の状況、通報に利用した通信施設等
(6) 初期消火の状況、使用した消火器具等及びその消火効果
(7) 延焼拡大した状況及び延焼経路
(8) 消防設備、避難器具等の作動、使用状況及び申述者の行動
(9) その他必要な事項(火災保険、生活状況、経営状況等)
(火災原因判定書)
第9条 調査責任者又は調査責任者が指定した調査員は、科学的かつ合理的に考察を行い、次に掲げる事項について火災原因判定書を作成する。
(1) 出火建物の判定 焼損建物が複数以上に及んだ場合は、どの建物が火元であったかを具体的事実を示して記載し判定する。
(2) 出火箇所の判定 実況見分調査書に記載された焼損状況の「客観的事実」を主体とし、出火出場時における見分調書を重要な証拠とする。更に、質問調査書の申述事項等を補完資料として活用し、所要の検討を加え結論を導き判定する。
(3) 出火原因の判定
ア 発火源としての立証事実内容
(ア) 発火源としての物が、着火物として可燃物に着火しうる熱エネルギーがあったか。
(イ) 発火源が、着火物に着火しうる環境条件(距離、時間、着火の難易度、気象状況等)にあうか。
(ウ) 着火物の燃焼が、火災状態として拡大していく条件にあったか。
(エ) 現場見分結果に、これらの事実の状況証拠が存在しているか。
(オ) 質問調査書の内容から、発火源と着火物との状態が、出火に結び付く要件となるか(必ずしも正しい申述とはかぎらないことを思料する。)。
イ 発火源以外の他の火源からの出火の可能性について反証
(ア) 出火建物内の発火源(電気、ガス、たばこ等関係あるもの)について反証する。
(イ) 出火箇所内での火気使用物全てに対し反証する。
(4) 延焼拡大の原因 出火建物及び出火建物から他の建物及び物件並びに物件から他の建物及び物件への延焼状況
(5) 死傷者が発生した場合は、その原因及び経過
(6) 消防用設備等の使用及び作動並びに防火管理の状況
(7) 消防関係法令違反や過去の指導状況等
(8) 結論 消防関係者以外の第三者が理解し易いよう要約して記載する。
附則
この訓令は、令和7年2月1日から施行する。